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# 私の名盤(29): クロイツェル・ソナタ
 

ウィーンでクロイツェル(Rodolphe Kreutzer, 1766-1831年)の演奏に接したベートーヴェンが、1803年にクロイツェルに献呈したヴァイオリン・ソナタは「クロイツェル・ソナタ」と呼ばれています。クロイツェル(Rodolphe Kreutzer, 1766-1831年)はフランスのヴァイオリニスト・作曲家・指揮者。「クロイツェル・ソナタ」は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中でもスケールが大きく、ヴァイオリン・ソナタの最高傑作と評される作品。ロシアの文豪トルストイによる同名の小説「クロイツェル・ソナタ」は、この曲に触発されて執筆された作品。

院長コメント: 20世紀屈指の名ヴァイオリニスト/グリュミオー(Arthur Grumiaux, 1921-86年)が3月31日ベルギーに誕生。ハスキルとの二重奏による「クロイツェル・ソナタ」は想い出深い演奏(蘭フィリップス、1957年録音)。また、ウィーン生まれの名演奏家シュナイダーハン(Wolfgang Schneiderhan, 1915-2002年)のヴァイオリンと巨匠ケンプ(Wilhelm Kempff, 1895-1991年)のピアノも捨て難い佳演。モノラル録音ながら音質良好(独グラモフォン、1952年録音)。
# 私の名盤(28): シューマンの春
 

今年生誕200年を迎える独ロマン派音楽の旗手シューマン(Robert Schumann, 1810-56年)の交響曲第1番「春」が1841年3月31日、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスでメンデルスゾーンの指揮の下初演。好評を持って迎えられました。

院長コメント: シューマンの交響曲で馴染みがあるのは、第1番「春」、第3番「ライン」、そして第4番。第1番「春」では2枚のCDについて私見を少々。ウィーン生まれの名指揮者クリップス(Josef Krips, 1902-74年)指揮ロンドン響による演奏は、持ち味の流麗典雅な潤いの中に春の精気を感じさせる名演(英デッカ、1957年)。またドイツの名指揮者サヴァリッシュ(Wolfgang Sawarisch, 1923年ー)がシューマン所縁のドレスデン国立管を指揮した演奏は、蒼古な響きの中にも春の清々しさが溢れ、颯爽とした仕上がり(英EMI, 1973年録音)。

# アルルの女 "L'Arlésienne"
 
 
世界的に人気を誇るゴッホ(Vincent van Gogh, 1853-90年)が3月30日オランダ南部に誕生。今年没後120年を迎えます。1888年、ゴッホは南仏アルル(Arles)に到着。かつて海運貿易港として栄華を誇ったアルルは凋落の街へと変貌。しかし、ゴッホはその景観にすっかり魅了され、「夜のカフェ」、「Starry Night Over the Rhone」、「アルルの女 (ジヌー夫人)」など傑作の多くをこの地で完成。

院長コメント: ビゼー作曲「アルルの女」は、第1組曲、第2組曲の管弦楽曲として広く親しまれています。クリュイタンス指揮パリ音楽院管による演奏は、ゆったりとしたテンポで、「アルルの女」の舞台となったのどかなプロヴァンスの雰囲気を色濃く表現。南欧の香り豊かな、ビゼーならではの色彩感を格調高く引き出したロングセラー(英EMI, 1964年録音)。写真は好きな画「アルルの寝室」。南仏的な明るい色彩と、その背後の寂寥感。

# ゴンドラの唄第81章: 花を見て、花に見られる


その夜も亦、新築の立派な市民会館で、「今日は、結構なお花見をさせて戴きまして」と言って、文化講演とやらには全くそぐわない気持ちになってしまった。外に出ると、ただ、呆れるばかりの夜桜である。千朶万朶枝を圧して低し、というような月並みな文句が、忽ち息を吹返して来るのが面白い。花見酒というので、或る料亭の座敷に通ると、障子はすっかり取払われ、花の雲が、北国の夜気に乗って、来襲する。「狐に化かされているようだ」と傍の円地文子さんが呟く。なるほど、これはかなり正確な表現に違いない。もし、こんな花を見る機は、私にはもう二度とめぐって来ないのが、先ず確実な事ならば。私は、そんな事を思った。何かそういう気味合いの歌を、頼政も詠んでいたような気がする。この年頃になると、花を見て、花に見られている感が深い、確か、そんな意味の歌であったと思うが、思いだせない。花やかへりて我を見るらん、---何処で、何で読んだか思いだせない。

院長コメント: 花見の季節を迎え、小林秀雄の名文「花見」からの抜粋(「新潮」昭和39年7月号)。頼政は、平安時代末期の武将・歌人の源頼政(1104-80年)。小林秀雄が思い出せなかったという歌は、「いりかたになりにけるこそ惜しけれど花やかへりて我を見るらん」。「いりかた」は夕暮れと晩年をかけたもの。若い時代は、欲望の曇った眼で美しい花を眺めていたが、その美しい花も自分を見返していたことに年輪を経た今きづく。そして今は、花を見て、花に見られる感が深い。粋な世界を知り尽くした老将の澄み切った境地!?
# 私の名盤(27): 田園(Pastoral)
 

ベルギー生まれの名指揮者クリュイタンス(Andre Cluytens, 1905-67年)が3月26日誕生。金髪碧眼でゲルマン民族を思わせる風貌と洗練された音楽作りは定評あるところ。

院長コメント: 私にとってのクリュイタンスの音楽は、ラヴェルでも、フォーレでも、ベルリオーズでもなくベートーヴェン。1957年から60年にかけて、ベルリン・フィル初めてのベートーヴェン交響曲全集を完成させたクリュイタンス。その白眉ともいえる演奏が交響曲第6番「田園」(英EMI, 1960年録音)。ベートーヴェンの交響曲に対するクリュイタンスの解釈は古典的ながら、展開される音楽はロマン的要素との均衡の上に成り立っているとの評を思い出します。ラテンとゲルマンの幸福な結合ここに極まれり。


 

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