2007-07-31 : 00:01 : ueta-fukuda

「もてあます西瓜一つやひとり者」
永井荷風(1879-1959年)53歳の夏、 「断腸亭日乗」1933年7月30日の記述から----わたくしは初めに言ったように決して独身論を主張するものではない。唯おのずから独身の月日を送ることが多いようになったのである。何事にも苦と楽とは相半ばするものである。妻帯者には妻帯者の楽しみもあれば苦しみもあろう。独身者の生涯もまたそのようである。或る年の夏、友達から見事な西瓜を一個貰ったことがあるが、大きすぎて一人ではどうすることもできない。折角の好意を無にする悲しさに、わたくしは「もてあます西瓜一つやひとり者」という発句を書き送って返礼に代えた。
副院長コメント: 荷風の「断腸亭日乗」は文体の見事さ、内容の面白さで読者を惹きつけて離しません。四季折々、面白いところを紹介していきたいと考えています。写真は当時、荷風が馴染みにしていた西銀座のドイツ人経営「ラインゴルド」酒場の女給風俗、荷風画(1932年10月)。”ラインの黄金”という名称が気に入りました。西瓜ついでに江戸時代の川柳から 「西瓜食う娘の口の難しさ」。
2007-07-30 : 00:01 : ueta-fukuda
7月30日、この日は明治の歌壇で正岡子規に師事した著名な歌人、伊藤左千夫(1864-1913年)の命日です。彼の小説「野菊の墓」は、木下恵介監督により「野菊の如き君なりき」(松竹、1955年)として映画化されました。ひとりの老人の回想シーンが楕円形のぼかしを取り入れたカメラワークで綴られます。タマゴスコープとも呼ばれました。映画の冒頭、ゆっくりと流れる秋の川面に、ひとりの老人を乗せた小舟が静かに揺れるところから物語りは展開します。
副院長コメント: 高校1年の時、学校の図書館で小説を読みました。木下恵介監督は二人のフレッシュな新人を主役に抜擢し、この映画の持つ清新な魅力を前面に出して成功しています。陰の立役者が老人役の笠智衆、そして憎まれ母親役の杉村春子です。まさに役者の二人でした。
2007-07-29 : 00:01 : ueta-fukuda

1951年7月29日は戦後初めてバイロイト音楽祭が再開された記念すべき日です。その初日に演奏されたのが、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」。フルトヴェングラーが生前に指揮した「第9」の中でも昔から定評ある名盤として知られています。ソリストにシュワルツコップ(S)、ヘンゲン(Ms)、ホップ(T)、エーデルマン(Bs)。第4楽章はシラーの歓喜に寄すの詩をバリトンが歌いだすことにより始まりますが、フィナーレはオケが弾けないぐらいの早さで突進し音楽は盛り上がりの頂点で突如として終ります。
副院長コメント: 見開きレコード・ジャケットの内側には、1976年9月6日”二人の偉大な天才に”という私のサインがあります。ベートーヴェンとフルトヴェングラーへの尊敬の言葉です。あれから30年以上が経過しましたが、今聴いても新鮮な興奮を覚えるのが不思議です。写真上がCD、下が初出LPジャケット。
2007-07-28 : 00:01 : ueta-fukuda

米ボストンの研究グループから、大豆摂取により更年期女性の血圧を簡単かつ安価に下げることができるとする研究報告がありました。対象は更年期女性60例(高血圧あり12例、なし48例)を ①カロリーの55%を炭水化物、30%を脂肪、15%を蛋白質で摂取 ②カロリーあたりの炭水化物、脂肪、蛋白質の構成比は①と同じで、蛋白質25gの代わりに1/2カップの無塩大豆を摂取~の2つの食事療法群(8週間)に割り付け。その結果②群では①群に比べて、高血圧女性の収縮期、拡張期血圧がそれぞれ約10%、約7%、正常血圧女性では約5%、約3%低下。さらに、高血圧女性では悪玉コレステロールも約10%低下。食用大豆は実用的で安全かつ安価な降圧法と研究者は述べています。
副院長コメント: 大豆や大豆製品は伝統的日本食のメニューです。長寿国日本の伝統的食生活が世界で注目される時代となりました。写真は大豆に関係ない「伏見の酒倉」(1964-66年)、「古道具屋」(1964-66年)、東山魁夷画。
2007-07-27 : 00:01 : ueta-fukuda
# 八重山吹

「七重八重 花は咲けども 山吹の実の(みの)ひとつだに なきぞ悲しき」(兼明親王、後拾遺和歌集)
関東三大梅林で知られる埼玉県越生(おごせ)の地に、太田道灌が鷹狩に来た時の話です。突然のにわか雨に、近くの農家で蓑(みの)を借りようと立ち寄ったところ、農家の娘は蓑の代わりに一輪の山吹の花を差し出しました。道灌は、この無礼に腹を立て、後で家臣にこの話をしたところ、それは古歌にかけて、家が貧しく蓑ひとつ持ち合わせがないことを奥ゆかしく答えたのだと教わりました。自分の無知を恥じた道灌は以後学問に励み、文武両道を兼ね備えた名将になったとのことです。ちなみに山吹は埼玉県川越市の花になっています。
副院長コメント: 最後まで和歌の心を失わなかった道灌の若かりし頃のエピソードです。季節外れの山吹の花ですが、どうか(道灌)御了承を。
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