2010-07-13 : 00:29 : ueta-fukuda

山形領に立石寺(りゅうしゃくじ)といふ山寺あり。慈覚大師の開基にして、殊(こと)に清閑の地なり。一見すべきよし、人々の勧むるによりて、尾花沢よりとつて返し、その間七里ばかりなり。日いまだ暮れず。麓(ふもと)の坊に宿借り置きて、山上の堂に登る。岩に巌(いわほ)を重ねて山とし、松栢年旧(しょうはくとしふ)り土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉じて物の音聞こえず。岸を巡り、岩を這ひて、仏閣を拝し、佳景寂寞(かけいじゃくまく)として心澄みゆくのみおぼゆ。
閑かさや岩にしみ入る蟬の声
How still it is here- Stinging into the stones, The locusts' trill. ---Donald Keene "The Narrow Road to Oku".
院長コメント: 松尾芭蕉「おくのほそ道」より「立石寺」(新暦7月13日-14日)からの一句。この名句は次のように推敲変遷---山寺や石にしみつく蟬の声→さびしさや岩にしみこむ蟬の声→さびしさの岩に染み込む蟬の声→閑かさや岩にしみ入る蟬の声(shizukasa ya iwa nishimiiru semi no koe)--- i という母音が七回、そして「いー、いー」という七回の i は蟬の声を表現---興味深いキーン氏の解析です。尚、岩にしみ入るにふさわしい蟬の種類はニイニイゼミとのこと。また、立石寺は現在「りっしゃくじ」と呼称。
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